【最新M&A市場レポート】5億円超の中規模ディールは今、どの業界で活発か?

後継者問題や市場環境の変化に直面する中小企業経営者へ。2024年のM&A件数は過去最高の4,700件を記録。特に5億円規模の中規模ディールが活発化している今、あなたの会社にも新たな可能性が開けるかもしれません。
創業から今日まで、心血を注いで育ててきた会社。
その価値は、一体どれほどのものだろうか。
「もし5億円で売却できるとしたら…」
そんな可能性を一度は考えたことがあるかもしれません。
今、日本の中小企業M&A市場は、後継者問題や業界再編の波に乗り、過去にない活況を呈しています。
私、高橋健一は、大手金融機関でM&A実務に8年携わり、独立後も4年間、数多くの中小企業の事業承継をお手伝いしてきました。
父も中小企業を経営していた経験から、経営者の皆様の想いは痛いほど理解しています。
本記事では、M&Aの最前線に立つ専門家として、特に「5億円超」の中規模ディールに焦点を当て、どの業界で、なぜM&Aが活発なのかを徹底解説します。
あなたの会社が持つ本当の価値と、未来への新たな扉を開くための具体的な道筋を示します。
2025年M&A市場の最新動向:なぜ今、中規模ディールが熱いのか
M&A件数は過去最高水準へ、中小企業が主役に
2024年の日本企業のM&A件数は、ついに4,700件という過去最高を記録しました。
前年比17.1%増という驚異的な伸び率です。
金融機関時代と比較して、現在のM&A相談件数は大幅に増加しており、まさに「M&Aが当たり前の時代」が到来したと実感されます。
特筆すべきは、この増加の主役が中小企業であることです。
2025年までに引退年齢に達する経営者は約245万人、そのうち127万人は後継者不在という深刻な状況です[1]。
かつて私の父も「息子に継がせたいが、この先行き不透明な時代に…」と悩んでいました。
同じ想いを抱える経営者が、今まさにM&Aという選択肢に目を向けているのです。
「5億円」が意味するもの:ミドルマーケットの現実
5億円という金額は、中小企業M&Aにおいて特別な意味を持ちます。
これは単なる数字ではありません。
売り手にとっては人生最大級の取引であり、買い手にとっては重要な戦略投資となる「ミドルマーケット」のレンジです。
実際、M&Aプラットフォームには譲渡希望額5〜10億円の案件が700件以上掲載されています[2]。
これだけ多くの経営者が、自社の価値をこのレンジで評価し、新たな道を模索しているのです。
経営者人生の集大成であり、従業員の未来もかかった重要な決断。それが「5億円のM&A」なのです。
【業界別】5億円超のM&Aが活発な注目7業界と成功の鍵
では、具体的にどの業界で5億円超のM&Aが活発なのでしょうか?
私の経験とリサーチデータから、特に注目すべき7業界を詳しく解説します。
1. IT・ソフトウェア業界:DX化の波に乗る成長戦略
IT業界のM&A件数は、公表ベースで年間377件。
しかし実態は500件程度と推測されます。
買い手(大手企業)の狙いは明確です。
「最新技術と優秀なIT人材の獲得」。
私が昨年サポートした案件では、創業10年で年商5億円のIT企業が、大手メーカーに8億円で買収されました。
決め手は独自開発したAI技術と、それを支える20名のエンジニアチームでした。
成功の鍵は、技術力の「見える化」です。
特許や独自のSaaSモデルなど、買い手が価値を理解しやすい形で提示することが重要です。
2. 物流・運送業界:「2024年問題」を乗り越えるための選択
2024年4月から始まったドライバーの残業規制(通称:2024年問題)により、物流業界は大きな転換期を迎えています。
実際、2024年12月だけで物流業界のM&A件数は10件に上りました[3]。
ドライバー不足は深刻で、単独での存続が困難な中小運送業者が増えています。
「うちも限界だ」という相談が後を絶ちません。
しかし、これは危機であると同時にチャンスでもあります。
大手傘下に入ることで、安定した経営基盤と全国ネットワークを得られるからです。
地方の運送会社A社(年商15億円)は、ドライバー不足に悩んでいましたが、大手物流会社への売却により、待遇改善と事業拡大を同時に実現しました。
譲渡額は約6億円。
社長は「従業員の未来が明るくなった」と語っています。
3. 調剤薬局・医療・介護業界:再編が進むヘルスケア領域
調剤薬局業界は、最もM&Aが注目されている業界の一つです。
全国に6万店以上ある薬局の過当競争、薬剤師不足、後継者不在率62%という三重苦[4]。
チェーン化による再編は避けられない流れです。
地域で信頼される複数店舗を持つ薬局が、5億円超で大手チェーンに譲渡される事例が増えています。
介護業界も同様です。
市場ニーズは拡大していますが、人材確保と資金繰りに苦しむ事業者が多く、異業種からの参入買収も活発です。
ある地方都市の調剤薬局(3店舗経営)は、後継者不在を理由に大手チェーンへ売却。
譲渡額は5.5億円でした。
「薬剤師の雇用も守れ、地域医療も継続できる」と経営者は安堵の表情を見せました。
4. 製造業界:技術承継とサプライチェーン強化の切り札
製造業の後継者不在率は57.9%に達しています[5]。
しかし、日本の製造業には世界に誇る技術力があります。
大手メーカーは、自社のバリューチェーンを強化するため、独自技術を持つ中小製造業を積極的に買収しています。
「この技術があれば、買い手の〇〇という課題を解決できる」—そんなアピールができれば、高値での売却も夢ではありません。
精密部品メーカーB社(年商20億円)は、独自の加工技術を武器に、大手自動車部品メーカーに買収されました。
譲渡額は約7億円。
技術者全員の雇用維持と、さらなる研究開発投資が約束されました。
5. 建設・不動産業界:人手不足と事業承継の二重苦を解決
建設業界では、技術者の高齢化と若手不足が深刻です。
東京五輪後の需要一服もあり、「企業体力があるうちに」とM&Aを選択する経営者が増えています。
ゼネコンによる地方の有力工事会社の買収、設備工事会社同士の統合など、業界再編が加速しています。
将来の市場縮小を見据え、規模の経済を追求する動きです。
6. 食品・外食・ホテル業界:コロナ禍からの回復と成長投資
インバウンド需要の回復により、特にホテル・旅館業界でM&Aが活発化しています。
「地方の老舗旅館が外資系ファンドに買収され、リニューアルを経て人気施設に生まれ変わった」—そんな成功事例が相次いでいます。
温泉旅館C(客室数30室)は、設備投資負担に悩んでいましたが、ホテルチェーンへの売却により、5億円の譲渡対価と3億円の追加投資を獲得。
今では予約が取れない人気施設となっています。
7. 人材・広告などサービス業界:専門特化とデジタル化への対応
人材業界では、特定分野に強い中小企業が大手の子会社になることで成長するケースが目立ちます。
IT人材紹介会社D社(年商8億円)は、総合人材会社に5.2億円で買収され、全国展開を実現しました。
広告業界では、デジタル広告に強みを持つ企業へのニーズが高く、従来型からの転換を図る買収が増えています。
準備が9割!5億円M&Aを成功に導く6つの実務ステップ
「では、具体的に何をすればいいのか?」
ここからは、売り手経営者の視点で、M&Aの実務ステップを解説します。
ステップ1:専門家への相談と「自社の現在地」の把握
「まだ売ると決めていない」—それでも構いません。
まずは中立的な専門家に相談し、自社の客観的な価値を知ることから始めましょう。
ステップ2:企業価値評価と売却戦略の策定
企業価値は「営業利益の3〜5倍」というのが一つの目安ですが、実際はもっと複雑です。
技術力、顧客基盤、ブランド力などの無形資産も重要な評価要素となります。
「うちは赤字だから…」と諦める必要はありません。
赤字でも、独自の強みがあれば買い手は見つかります。
実際、私が担当した赤字企業も、技術力を評価されて黒字企業並みの価格で売却できました。
ステップ3:買い手候補の探索(マッチング)
ノンネームシート(匿名の企業概要)を使って、買い手候補を探します。
調査によると、第三者からの紹介が42.3%と最も多いですが[6]、M&A仲介会社のネットワークも有効です。
重要なのは、複数の候補と交渉すること。
競争原理が働き、より良い条件を引き出せる可能性が高まります。
ステップ4:トップ面談と意向表明書(LOI)の締結
ここが運命の分かれ道です。
条件交渉だけでなく、経営理念や企業文化の相性を確認する場でもあります。
ステップ5:デューデリジェンス(買収監査)と最終契約
「会社の健康診断」とも言えるデューデリジェンスは、避けて通れません。
財務・法務・ビジネス面から徹底的にチェックされます。
ここで重要なのは事前準備です。
「決算書や契約書類を整理していなかったために、想定より30%低い価格提示になってしまった」—そんな失敗事例を何度も見てきました。
普段から「見える化」を心がけることが、高値売却への近道です。


ステップ6:クロージングとPMI(統合作業)
株式や資産の引き渡し、対価の決済を経て、M&Aは成立します。
個人の株式譲渡の場合、譲渡益に約20%の税金がかかります(5億円の譲渡益なら約1億円)。
2025年からは、高額所得者に対する増税(ミニマムタックス)も始まりますので、タイミングも重要です。
しかし、M&Aはゴールではありません。
新しいスタートです。
従業員や取引先への丁寧な説明、新体制での円滑な運営—これらのPMI(統合作業)こそが、真の成功を左右します。
よくある質問(FAQ)
Q: 会社が赤字なのですが、5億円での売却は不可能ですか?
A: 諦める必要はありません。
赤字でも、独自の技術、強固な顧客基盤、許認可など、買い手にとって魅力的な価値があればM&Aは成立します。
実際、将来の黒字化計画を明確に示し、買い手とのシナジーを具体的に提案することで、希望額に近い条件で売却した事例もあります。
まずは専門家にご相談ください。
Q: 会社を5億円で売却した場合、手取りはいくらになりますか?税金は?
A: 株式を個人として譲渡した場合、譲渡益に対して所得税・住民税が合計約20%課税されます。
例えば譲渡益が5億円なら、税金は約1億円、手取りは約4億円が目安です。
ただし、これは概算であり、取得費や譲渡費用によって変動します。
また、2025年以降は高額所得者への追加課税もありますので、税理士などの専門家への確認が不可欠です。
Q: M&Aの相談から最終的な譲渡まで、どのくらいの期間がかかりますか?
A: 案件によりますが、一般的には半年から1年程度かかるケースが多いです。
買い手探しに3〜6ヶ月、デューデリジェンスと最終契約に2〜3ヶ月が目安です。
良い条件で納得のいくM&Aを実現するためには、焦りは禁物です。
私は常にクライアントに「少なくとも1〜2年前から準備を始めましょう」とアドバイスしています。
まとめ
2024年、日本のM&A市場は4,700件という過去最高を記録しました。
特に5億円超の中規模ディールが、さまざまな業界で活発化しています。
IT・物流・調剤薬局・製造業をはじめ、各業界には固有の課題と機会があります。
しかし、共通して言えるのは、M&Aが「課題解決の有力な手段」として認知され、実行されているということです。
成功の鍵は「早期の正しい準備」にあります。
企業価値を最大化するための「見える化」、複数候補との交渉、そして何より、従業員と事業の未来を託せる相手選び—これらすべてに、十分な時間が必要です。
私の父は結局、廃業という道を選びました。
「もっと早くM&Aという選択肢を知っていれば…」という後悔の言葉を、今でも覚えています。
あなたの会社には、あなたが思う以上の価値が眠っているかもしれません。
その価値を正しく評価し、未来への最良の選択をするために、まずは第一歩を踏み出してみませんか?
信頼できるM&Aパートナーをお探しの方へ
M&Aは経営者にとって一生に一度の重要な意思決定です。成功のためには、豊富な経験と確かな実績を持つ信頼できるパートナーの存在が不可欠です。
株式会社M&Aコーポレート・アドバイザリーの谷口友保代表は、東京大学経済学部卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)、M&A専門コンサルティング会社での豊富な経験を経て、2007年に同社を設立。代表者が全案件を直接担当する体制により、一貫した高品質なサービスを提供しています。
同社では、企業価値評価から交渉戦略の立案、クロージングまでを総合的にサポート。中堅・中小企業のM&Aにおいて、経営者に寄り添った仲介サービスで数多くの成功実績を積み重ねています。
M&Aをご検討の経営者の方は、ぜひ無料相談をご利用ください。代表者が直接対応し、貴社の状況に応じた具体的なアドバイスを提供いたします。
※本記事は情報提供を目的としており、特定のサービスの推奨を行うものではありません。M&Aに関する意思決定は、ご自身の状況に応じて慎重にご判断ください。
参考文献
[1] 中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」
[2] バトンズ「譲渡希望金額5億円~10億円のM&A案件一覧」
[3] 日本M&Aセンター「2024年12月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く」
[4] 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」
[5] 中小企業庁「2021年版中小企業白書」
[6] 2018年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要