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5億円超の売却を阻む落とし穴!中規模M&Aでよくある失敗事例とその回避策

創業30年の製造業オーナーが5億円での売却を目前に破談。情報漏洩による取引先離反、財務の未整理、契約書の詰めの甘さ――。2024年に過去最高4,700件を記録した日本のM&A市場で、なぜ多くの中規模案件が失敗に終わるのか。元大手金融機関M&Aアドバイザーが、実際の失敗事例から学ぶ「5億円の壁」突破術を徹底解説。

この記事の監修者

谷口 友保
株式会社M&Aコーポレート・アドバイザリー

1971年埼玉県上尾市生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業、同年公認会計士2次試験合格。翌年同学部経済学科を卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。1996年にM&A専門の株式会社レコフへ。2007年、株式会社M&Aコーポレート・アドバイザリーを設立し代表取締役に就任。
代表者挨拶・経歴詳細はこちら

目次

中規模M&A(5億円超)の現状と特有のリスク

なぜ中規模M&Aは難しいのか?統計データから見る実態

「M&Aの成功率は3割」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
実は、この数字の正確な統計は存在しませんが、私が現場で見てきた限り、特に5億円規模のM&Aには独特の難しさがあります。

2024年の日本企業のM&A件数は4,700件と前年比17.1%増加し、過去最高を更新しました。
この活況の裏で、中規模案件特有の課題が浮き彫りになっています。

私がかつて担当した老舗部品メーカーのケースでは、売上高15億円、営業利益8,000万円という優良企業でしたが、最終的に3回も破談を繰り返しました。
その原因を分析すると、5億円規模のM&Aが直面する構造的な問題が見えてきます。

  • 情報管理の難しさ:大企業のような専門部署がなく、噂が広まりやすい
  • オーナー依存度の高さ:経営者個人の信用で成り立つ取引が多い
  • 買い手選定の複雑さ:上場企業から地場企業まで候補が多岐にわたる

特に深刻なのは、後継者不在の問題です。
60歳以上の中小企業経営者の約半数が後継者不在という状況の中、M&Aは重要な選択肢となっていますが、準備不足による失敗が後を絶ちません。

5億円規模のM&Aが直面する「中途半端な規模」の落とし穴

「5億円という金額は、M&A市場では実に微妙なポジションなんです。」
これは、ある仲介会社の役員が漏らした本音です。

レーマン方式による仲介手数料は、5億円の場合で2,500万円(5億円×5%)となります。
買い手・売り手双方から手数料を受け取る仲介契約なら合計5,000万円ですが、これは仲介会社にとって「手間の割に合わない」金額なのです。

なぜなら、5億円の案件も50億円の案件も、基本的な手続きの複雑さはそれほど変わらないからです。
財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、契約交渉――すべてのプロセスで専門家の工数がかかります。

さらに、買い手層の問題もあります。

  • 大手企業:「最低でも10億円規模でないと検討対象外」
  • 中堅企業:「5億円は大きすぎてリスクが取れない」
  • 投資ファンド:「規模が小さすぎて投資効率が悪い」

このような「中途半端な規模」だからこそ、しっかりとした準備と戦略が必要なのです。

5億円M&Aの「中途半端な規模」の落とし穴

【失敗事例①】情報漏洩による企業価値毀損と破談

「秘密保持に始まり秘密保持に終わる」M&Aの鉄則

2023年、私が相談を受けた精密機器メーカーA社(売上高12億円)の事例をご紹介しましょう。

買い手候補の上場企業B社との交渉は順調に進み、基本合意まであと一歩という段階でした。
ところが、B社の若手社員が主要取引先への訪問時に、うっかり「御社と取引のあるA社を買収予定でして…」と口を滑らせてしまったのです。

結果は悲惨でした。

  • 3日後:主要取引先から「経営不振なのか」との問い合わせ
  • 1週間後:優秀な技術者2名が退職願を提出
  • 2週間後:銀行から「何か重大な変化があったのか」との照会
  • 1か月後:売上の15%を占める取引先が発注を停止

A社の社長は憤慨し、交渉は即座に打ち切られました。
その後、企業価値は当初提示額の7割まで下落し、別の買い手を探すのに1年以上を要しました。

情報管理の具体的手法:誰に、いつ、どう伝えるか

では、どうすれば情報漏洩を防げるのでしょうか。
私は「情報開示の5段階アプローチ」を推奨しています。

第1段階:極秘フェーズ(社長+CFOのみ)

  • 期間:初期接触から基本合意まで
  • 内容:M&Aの可能性を探る
  • 注意:社内メールも使わず、対面での相談に限定

第2段階:幹部共有フェーズ(役員3-4名)

  • 期間:基本合意の1か月前から
  • 内容:主要幹部への意向確認
  • 方法:個別面談で守秘義務契約を締結

第3段階:キーパーソン告知フェーズ(部長級5-10名)

  • 期間:基本合意締結後
  • 内容:事業継続への協力要請
  • 工夫:「経営統合」ではなく「資本提携」という表現を使用

第4段階:管理職展開フェーズ(課長級まで)

  • 期間:デューデリジェンス開始時
  • 内容:各部門での準備指示
  • 配慮:個人の処遇への不安に配慮した説明

第5段階:全社公表フェーズ

  • 期間:最終契約締結の直前または直後
  • 内容:正式発表と今後の方針説明
  • 準備:FAQ集を事前に作成し、想定質問に備える

特に重要なのは、NDA(秘密保持契約)の締結を徹底することです。
買い手企業の担当者だけでなく、関与するすべての専門家、さらには自社の関係者とも個別にNDAを結ぶことをお勧めします。

【失敗事例②】財務・法務の準備不足による減額交渉

デューデリジェンスで発覚する「隠れた爆弾」

「うちの会社は毎年黒字だし、問題ないだろう。」
これは、多くの中小企業経営者が陥る危険な思い込みです。

私が遭遇した最も衝撃的な事例は、創業100年を超える老舗食品卸売業C社でした。
売上高20億円、営業利益1億円という優良企業で、買い手も8億円という高値を提示していました。

しかし、デューデリジェンスで次々と問題が発覚したのです。

株主構成の未整理

  • 創業時の出資者の相続が3代にわたり未整理
  • 株主が47名に分散し、一部は所在不明
  • 株式買い集めに6か月、追加コスト3,000万円

労務管理の曖昧さ

  • 残業代の未払いリスク:過去2年分で推定4,000万円
  • 退職金規程の不備:潜在債務1億2,000万円
  • 有給休暇の未消化:全社員分で2,000万円相当

簿外債務の存在

  • 社長個人への未払い役員報酬:8,000万円
  • リース契約の個人保証:1億5,000万円
  • 取引先への商慣習による実質的な債務保証:5,000万円

結果として、当初8億円だった買収価格は4億5,000万円まで減額され、社長は泣く泣く受け入れざるを得ませんでした。

セルフDDによる事前準備:専門家を活用した企業価値向上策

このような事態を防ぐため、私は売却の1年前から「セルフ・デューデリジェンス」を実施することを強く推奨しています。

財務面のセルフDD(公認会計士と実施)
□ 過去3期分の決算書の精査
□ 簿外債務・偶発債務の洗い出し
□ 在庫評価の適正性確認
□ 売掛金の回収可能性評価
□ 個人と法人の資産・取引の明確な分離
□ 税務リスクの総点検

法務面のセルフDD(弁護士と実施)
□ 株主名簿の整備と株式の集約
□ 重要契約書の棚卸しと不利な条項の見直し
□ 就業規則・退職金規程の整備
□ 知的財産権の権利関係整理
□ 訴訟リスクの評価
□ COC(チェンジ・オブ・コントロール)条項の確認

事業面のセルフDD(中小企業診断士等と実施)
□ 事業計画の妥当性検証
□ 主要取引先との関係性評価
□ 競合環境の分析
□ 人材の定着状況と後継者育成
□ システム・設備の更新計画
□ 許認可・免許の承継可能性確認

セルフDDの費用は、専門家への依頼を含めて300-500万円程度かかりますが、これにより企業価値が数千万円向上するケースは珍しくありません。
「100万円の投資で1,000万円の価値向上」は、決して誇張ではないのです。

【失敗事例③】仲介業者・買い手任せによる不利な条件合意

「相場です」の一言に潜む落とし穴

「この条件が相場ですから。」
M&A仲介業者からこう言われて、そのまま受け入れていませんか?

2024年春、私がセカンドオピニオンを求められた製造業D社の事例は、まさに「仲介業者任せ」の危険性を物語っています。

D社(売上高18億円、営業利益1.2億円)は、大手仲介会社E社の紹介で買い手候補F社と交渉していました。
E社の担当者は「F社は優良企業で、提示価格6億円は相場より高い」と強調し、専属交渉に入ることを勧めました。

しかし、不審に思った社長が私に相談したところ、以下の問題が判明したのです。

  • 比較検討の欠如:他の買い手候補への打診なし
  • 利益相反の構造:E社はF社からも手数料を受け取る立場
  • 相場の誤認:同業他社のM&A事例では8-10億円が妥当

2024年8月に改訂された中小M&Aガイドライン(第3版)では、利益相反に係る禁止事項が具体化され、仲介者は依頼者の利益を犠牲にして自己の利益を図ってはならないことが明記されています。

結局、D社は別のアドバイザーを起用し、複数の買い手と交渉した結果、最終的に8.5億円で売却に成功しました。

主体的な交渉を実現する3つのアプローチ

では、どうすれば有利な条件で交渉を進められるのでしょうか。
私の経験から、以下の3つのアプローチが効果的です。

1. 複数の仲介会社・アドバイザーの比較

まず、最低3社のM&A仲介会社またはFA(ファイナンシャル・アドバイザー)と面談することをお勧めします。
比較すべきポイントは、

  • 手数料体系(株価レーマン方式か移動総資産レーマン方式かで大きく異なる)
  • 買い手候補のネットワーク
  • 過去の成約実績(特に同業界・同規模)
  • 担当者の経験と相性
  • 中小M&Aガイドライン遵守の宣言有無

2. 売り手側FAの活用

仲介会社は買い手・売り手双方から手数料を受け取るため、構造的に利益相反が生じます。
一方、売り手側FAは売り手の利益最大化に専念できます。

FAを選ぶ際のチェックポイント:
□ 成功報酬型か、月額報酬(リテイナー)併用型か
□ 最低報酬額の設定(相場は500万円が最多)
□ 専属契約の期間と解除条件
□ テール条項(契約終了後の成約への報酬請求)の内容

3. 譲渡条件の優先順位明確化

交渉を始める前に、以下の優先順位を明確にしておくことが重要です。

  • 価格(いくら以上なら売却するか)
  • 従業員の雇用維持(何年間、何%維持が必須か)
  • 社名・ブランドの存続
  • 自身の処遇(顧問として残るか、完全引退か)
  • 決済条件(一括払いか、アーンアウトありか)
  • 競業避止義務の範囲と期間

特に重要なのは「譲れない条件」と「交渉可能な条件」を分けることです。
すべてを要求すると交渉は行き詰まりますが、優先順位が明確なら、柔軟な対応が可能になります。

【失敗事例④】契約書の詰めの甘さによる「約束違反」

口約束は存在しないのと同じ:契約書に明記すべき重要事項

「社長、安心してください。従業員は全員継続雇用しますから」
「社名は絶対に残します。地域に愛されたブランドですからね」

温厚な性格で知られる運送会社G社の社長は、買い手企業H社の社長のこの言葉を信じ、詳細な条件を契約書に明記することなく売却を決めました。
売却価格は5.5億円。地域の雇用を守れると安堵していました。

しかし、売却から半年後、約束はすべて反故にされました。

  • 従業員50名のうち20名がリストラ
  • 社名は消滅し、H社の一事業部に
  • 本社機能は県外に移転
  • 地域密着の配送サービスは廃止

G社の元社長は「契約書に書いていないでしょう」の一言で、なすすべがありませんでした。

このような悲劇を防ぐため、以下の事項は必ず契約書に明記すべきです。

雇用に関する条項
□ 従業員の雇用維持期間(最低2-3年)
□ 労働条件の維持または改善
□ 解雇の場合の事前協議義務
□ 退職金制度の継続

事業運営に関する条項
□ 社名・商号の使用期間
□ 本社・主要拠点の所在地維持
□ 既存顧客との取引継続
□ 一定期間の事業投資義務

経営者保証の解除(特に重要)
□ 金融機関借入の保証解除時期
□ リース契約の保証解除
□ 取引先への保証の引き継ぎ
□ 保証解除できない場合の補償

売主の処遇に関する条項
□ 顧問契約の条件(期間、報酬、業務内容)
□ 競業避止義務の範囲と期間
□ 既存取引先との関係維持への協力

表明保証とアーンアウト:リスクヘッジの高度なテクニック

5億円規模のM&Aでも、以下の高度な契約テクニックを活用することで、リスクを大幅に軽減できます。

表明保証の活用

表明保証とは、売主が買主に対して、会社の状況について真実であることを表明し保証する条項です。
虚偽があった場合は損害賠償請求が可能になります。

重要な表明保証事項:

  • 財務諸表の正確性
  • 重要な契約の有効性
  • 訴訟・紛争の不存在
  • 法令遵守の状況
  • 知的財産権の帰属

なお、100億円以上の大型案件では表明保証保険(W&I保険)の活用も可能ですが、5億円規模では保険料を考慮すると現実的ではありません。

アーンアウト条項の設定

アーンアウトとは、売却後の業績に応じて追加の対価を支払う仕組みです。
買主のリスクを軽減しつつ、売主も努力次第で対価を増やせます。

アーンアウトの設計例:

  • 基本譲渡価格:5億円
  • 追加対価:売却後2年間の営業利益が
    • 1億円以上→追加5,000万円
    • 1.5億円以上→追加1億円
  • 上限:最大6億円

ただし、アーンアウトには以下の注意点があります。
□ 業績測定の基準を明確に定義
□ 売却後の経営への関与度を確保
□ 会計処理の恣意性を排除する仕組み
□ 未達成時の紛争解決方法を規定

PMI(買収後統合)の落とし穴と売り手ができる対策

売却後に「こんなはずでは…」とならないために

M&Aの本当の成否は、売却後のPMI(Post Merger Integration:買収後統合)で決まります。
しかし、多くの売主は「売却したら関係ない」と考えがちです。

これは大きな間違いです。なぜなら、

  • アーンアウト条項がある場合、業績次第で追加対価が変動
  • 顧問として残る場合、統合の失敗は自身の評価に直結
  • 従業員の処遇悪化は、地域での評判を損なう
  • 最悪の場合、表明保証違反で損害賠償請求を受ける

私が見てきた失敗例をご紹介しましょう。

事例:買い手企業の経営悪化
プラスチック加工業I社(売却価格6億円)は、上場企業J社に売却されました。
しかし、J社は買収資金の調達で財務が悪化し、約束された設備投資2億円が凍結。
結果、I社の競争力は低下し、売上は3年で半減しました。

事例:企業文化の衝突
伝統工芸品製造K社は、効率重視の投資ファンドに売却後、職人の手作業がすべて機械化され、品質低下でブランド価値が毀損。
創業家は「先祖に申し訳ない」と悔やみました。

優良な買い手の見極め方:財務健全性と企業文化の確認ポイント

では、どうすれば「良い買い手」を見極められるのでしょうか。
以下のチェックリストを活用してください。

財務健全性の確認
□ 直近3期の財務諸表を入手
□ 買収資金の調達方法(自己資金か借入か)
□ 既存事業のキャッシュフロー
□ 格付け情報(上場企業の場合)
□ 主要取引銀行からの評価

企業文化・経営方針の確認
□ 過去のM&A実績と統合後の状況
□ 経営理念・ビジョンとの整合性
□ 従業員の定着率
□ 地域社会との関係性
□ ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み

買い手デューデリジェンスの実施
意外に思われるかもしれませんが、売り手も買い手を調査すべきです。

  • 買い手企業の評判調査(ネット、業界関係者)
  • 可能であれば買い手企業の現場視察
  • 過去にM&Aで売却した経営者へのヒアリング
  • 中小M&Aガイドラインでは「不適切な譲り受け側」の情報共有の仕組み構築が期待されている

特に注意すべき「危険な買い手」の兆候:
⚠️ 異常に高い買収価格を提示(相場の1.5倍以上)
⚠️ デューデリジェンスを省略しようとする
⚠️ 契約書の重要条項を曖昧にしたがる
⚠️ 買収後の事業計画が非現実的
⚠️ 過去のM&Aでトラブルの前歴あり

よくある質問(FAQ)

Q: 赤字企業でも5億円で売却できますか?

A: 赤字でも事業価値があれば売却可能です。
私が支援した金属加工業L社は、3期連続赤字(年間赤字額3,000万円)でしたが、以下の強みが評価され、4.5億円で売却できました。

  • 特殊技術による参入障壁の高さ
  • 優良顧客との長期取引関係
  • 赤字の原因が明確(設備の老朽化)で改善可能

事業再生型M&Aでは、買い手のノウハウによる黒字化を前提に評価されます。
重要なのは、

  1. なぜ赤字なのかの明確な説明
  2. 黒字化への具体的な道筋
  3. 事業の本質的な強みの訴求

ただし、債務超過の場合は、第二会社方式やスポンサー型の買い手を探すなど、通常とは異なるアプローチが必要です。

Q: 経営者個人の連帯保証はどうなりますか?

A: これは多くの経営者が最も心配される点です。
経営者保証ガイドラインの特則により、事業承継時の新旧経営者からの二重徴求は原則禁止されています。

M&Aにおける保証解除のパターン:

  1. 買い手の信用力が高い場合:金融機関が保証解除に応じやすい
  2. 買収と同時に借入返済:買い手が借入を一括返済し、保証も消滅
  3. 保証の引き継ぎ:買い手の経営者が保証を引き継ぐ

実務上の注意点:

  • 保証解除は必ず売主・買主が帯同で金融機関と交渉
  • 契約書に保証解除を停止条件として明記
  • 解除できない場合の補償条項を設定
  • リース、割賦等の保証も忘れずに確認

Q: 売却後も経営に関わることは可能ですか?

A: 多くの中規模M&Aでは、円滑な事業承継のため1~3年程度の経営関与が求められます。
関わり方には以下のパターンがあります。

1. 代表取締役として残留(1-2年)

  • メリット:経営の継続性確保、従業員の安心感
  • 注意点:買い手との権限配分を明確に

2. 顧問・相談役として支援(2-3年)

  • 業務内容:重要顧客との関係維持、技術指導等
  • 報酬相場:前職年収の30-50%程度

3. 非常勤取締役として関与(3-5年)

  • 月1-2回の取締役会出席
  • 重要な意思決定への助言

ただし、契約で明確に定めるべき事項:
□ 業務内容と責任範囲
□ 報酬・処遇条件
□ 任期と更新条件
□ 競業避止義務の範囲(同業種での新規事業は通常3-5年制限)
□ 守秘義務の内容

まとめ

5億円超の企業売却は、適切な準備と戦略があれば十分に実現可能です。

本記事で紹介した4つの主要な落とし穴を整理すると、

  1. 情報漏洩→5段階の情報開示アプローチで管理
  2. 準備不足→売却1年前からのセルフDDで企業価値向上
  3. 交渉の主体性欠如→複数の選択肢確保と優先順位の明確化
  4. 契約の詰めの甘さ→重要事項の文書化と買い手調査の徹底

私が20年以上のM&A実務で学んだ最も重要な教訓は、「M&Aの成功は準備で8割決まる」ということです。

特に5億円規模の「中途半端な規模」だからこそ、大企業のような潤沢なリソースがない中で、いかに効率的に準備を進めるかが勝負の分かれ目となります。

2024年に過去最高の4,700件を記録した日本のM&A市場は、今後も拡大が予想されます。
一方で、事業承継税制の特例措置は2027年12月末で終了し、特例承継計画の提出期限も2026年3月末と迫っています。

つまり、向こう2-3年が中小企業M&Aの大きな転換期となるでしょう。

あなたが育てた会社が新たなステージで発展し、従業員も幸せに働き続けられる――そんな理想的なM&Aを実現するために、今日から準備を始めてみませんか。

「備えあれば憂いなし」。この古い諺は、現代のM&Aにも通じます。
まずは財務諸表の整理から、信頼できる専門家への相談から、第一歩を踏み出してください。

成功への道は、必ずその先に開けています。

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この記事を書いた人

中小企業のM&A、特に5億円規模の取引において、高橋健一は独立系コンサルタントとして揺るぎない存在感を放っている。大手金融機関でのキャリアから独立し、現在は「M&A 5億の扉」の専門家として、売り手経営者の立場に立った情報発信と助言を行う。

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