2026年M&A市場予測!5億円規模の中規模案件はどう動く?

こんにちは。
独立系M&Aコンサルタントの高橋 健一です。
2026年のM&A市場は、引き続き活発な動きが予測されています。
特に、企業価値5億円規模のM&Aを目指す経営者の皆様にとっては、2025年から続く金利上昇という新たな変数が加わり、「本当に今が売り時なのだろうか」「自社の価値は正しく評価されるのか」といった不安が尽きないかもしれません。
本記事では、特定の金融機関や仲介会社に属さない完全に中立な立場から、2026年のM&A市場を徹底予測します。
マクロな市場動向から、皆様の会社と同じ5億円規模の案件に与える具体的な影響、そして売り手経営者が「今」取るべき最善の戦略まで、私の実務経験を交えながら客観的な視点で分かりやすく解説します。
2025年の締めくくりの記事になります、ぜひご覧ください。
【この記事の結論】2026年、5億円規模のM&A市場で成功する3つの鉄則
| 質問(読者の知りたいこと) | 結論(この記事が提供する答え) |
|---|---|
| 2026年の市場はどうなる? | 事業承継ニーズを背景に「売り手市場」は継続。ただし金利上昇の影響で、買い手は企業の「本質的な収益力」をより厳しく評価する。 |
| どんな買い手がいる? | 「戦略的買い手(事業会社)」と「PEファンド」への二極化が進む。自社の強みがどちらに響くかを見極めることが重要。 |
| 売り手は何をすべき? | 「客観的な企業価値の把握」「柔軟な売却スキームの検討」「中立的な専門家の活用」という3つの準備が不可欠。 |
2026年M&A市場の全体像:マクロ環境から読み解く3つの重要トレンド
ではまず、2026年のM&A市場全体を動かす「3つの大きな潮流」から見ていきましょう。
これらを理解することが、ご自身の会社の立ち位置を客観的に把握する第一歩となります。
継続する事業承継ニーズと「2025年問題」の影響
まず最大の潮流は、やはり深刻な後継者不足を背景とした事業承継ニーズの継続です。
帝国データバンクの最新調査(2025年11月)によると、日本企業の後継者不在率は依然として50.1%と、半数の企業で後継者が決まっていない状況です。
特に中小企業に限れば、その割合は51.2%に上ります。
これは単なる統計データではなく、まさに今、多くの経営者が直面している現実そのものです。
国の中小企業支援の拠点である事業承継・引継ぎ支援センターにおけるM&A成約件数は、令和5年度(2023年度)に過去最高の2,023件を記録しました。
この数字は、後継者不在を解決する手段としてM&Aが社会的に定着したことを示しており、2026年もこの流れは間違いなく続きます。
この状況が売り手経営者にとって何を意味するのか?
それは、「買い手候補を見つけやすい売り手市場が継続する」という追い風です。
しかし、一方で買い手側も多くの選択肢を持つため、「どの会社を選ぶか」という視線はより厳しくなることも意味します。
ただ待っているだけでは、その他大勢に埋もれてしまう可能性があるのです。
金利上昇がM&A市場に与える影響:資金調達と企業価値評価の変化
2026年の市場を読み解く上で、避けて通れないのが「金利の上昇」です。
日本銀行は2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げ、多くの中央銀行エコノミストは2026年末には1%以上に達すると予測しています。
私が金融機関で法人融資を担当していた頃を思い返すと、金利が1%上昇するということは、企業の資金繰りに想像以上のインパクトを与えます。
参考: 2026年金利が上がったらどうなる?今から備えておきたいこと3選
この金利上昇は、M&A市場に2つの具体的な影響を及ぼします。
1. 買い手の資金調達コスト増加
買い手企業が銀行借入で買収資金を賄う場合、支払う利息が増えます。これにより、特に借入への依存度が高い買い手の投資意欲が慎重になる可能性があります。
2. 企業価値評価(バリュエーション)への影響
M&Aで用いられる企業価値評価の手法〈DCF法など〉では、将来生み出すキャッシュフローを「割引率」という金利に似た指標で現在価値に割り引きます。
金利が上がるとこの割引率も上昇し、結果として理論上の企業価値が下押しされる傾向にあります。
「では、売却価格が下がってしまうのか?」とご心配になるかもしれませんが、一概にそうとは言えません。
重要なのは、金利という外部環境以上に、貴社の事業が持つ独自の収益力と将来性です。
金融機関の融資審査の現場でも、金利情勢以上に「この事業は将来にわたって安定的にキャッシュを生み出せるか」という点が最も厳しく見られます。
金利上昇局面では、この事業の本質的な価値がより一層問われることになるとご理解ください。
制度改革のインパクト:「M&Aアドバイザー資格」創設と市場の透明化
3つ目のトレンドは、市場の健全化に向けた制度改革の動きです。
M&Aの現場では、残念ながら知識や経験の乏しいアドバイザーや、売り手の利益を軽視するような悪質な仲介業者に関するトラブルが後を絶ちませんでした。
こうした状況を改善するため、中小企業庁は2026年度にも「中小M&Aアドバイザー」という国家資格に近い制度を創設する方向で検討を進めています。
これは、アドバイザー個人に財務・法務などの専門知識と高い倫理観を求めるもので、経営者の皆様が安心して相談できる専門家を選びやすくなる、非常にポジティブな変化です。
私が常々「情報こそが経営者の武器」と申し上げてきたのは、こうした玉石混交の専門家の中から、真に信頼できるパートナーを見つけ出していただくためです。
この制度改革は、業界全体の透明性を高め、M&A市場の健全な発展を後押しするでしょう。
経営者の皆様にとっては、専門家選びの客観的な物差しが一つ増えることになり、M&A成功の確度を高める上で大きな追い風となります。
【本題】5億円規模のM&A市場はこう動く!2026年ミクロ予測
マクロな潮流を踏まえた上で、いよいよ本題である「5億円規模のM&A市場」が具体的にどう動くのかを予測します。
全体像を駅伝に例えるなら、ここからは皆様が走る「特定の区間」のコース解説です。
買い手の二極化:戦略的買い手 vs PEファンド
では、5億円規模の会社を「買いたい」と考えるのは、どのような相手なのでしょうか?
2026年は、買い手のタイプがより鮮明に二極化すると私は見ています。
1. 戦略的買い手(事業会社)
自社の事業との相乗効果〈シナジー〉を狙ってM&Aを行う企業です。例えば、同業者が販路拡大のために買収するケースや、メーカーが新たな技術を取り込むために買収するケースなどが挙げられます。
金利が上昇しても、自己資金が豊富で、明確な戦略目的を持つ事業会社は、引き続き積極的な買収意欲を示すでしょう。彼らは、貴社の持つ技術や顧客基盤、従業員のノウハウといった「事業そのものの価値」を高く評価する傾向があります。
2. PEファンド(投資会社)
投資家から集めた資金で企業を買収し、経営改善によって企業価値を高めてから売却することで利益を得ることを目的とする「経営のプロ集団」です。近年は中小企業を対象とするファンドも増えており、5億円規模の案件も決して珍しくありません。
彼らは、財務的な規律を重視するため金利上昇には敏感ですが、「経営改善による成長の伸びしろ」という独自の視点で企業を評価します。事業会社が見向きもしなかった会社に、思わぬ高値を提示することもあります。
ある老舗の部品メーカーのケースでは、同業者からは「古い設備だ」と評価されませんでしたが、PEファンドは「特定の顧客との長年の信頼関係こそが宝だ」と評価し、M&Aが成立しました。
自社の強みが、どちらのタイプの買い手に響くのかを見極めることが重要です。


注目される業界と見過ごされがちな業界
2026年、M&Aが特に活発化すると予測される業界と、少し注意が必要な業界について触れておきます。
注目される業界
2025年に引き続き、IT・ソフトウェア、ヘルスケア、再生可能エネルギーといった成長分野は買い手の関心が高いでしょう。また、あらゆる業界で不可欠となっているDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI、サイバーセキュリティに関連する技術やサービスを持つ企業は、規模が小さくても引く手あまたとなる可能性があります。
見過ごされがちな業界
一方で、従来型の製造業、建設業、地域密着型の小売業などは、後継者不足が深刻であるにもかかわらず、買い手が見つかりにくいケースも散見されます。しかし、悲観する必要はありません。
例えば、製造業であれば「特定の加工技術」を可視化する、建設業であれば「公共事業の受注実績」を整理する、小売業であれば「優良顧客リスト」をデータ化するなど、自社の強みを言語化・定量化する「磨き上げ」を行うことで、買い手の見る目は劇的に変わります。
重要なのは、業界という大きな括りではなく、貴社が持つ「独自の価値」に光を当てることです。
「異業種×M&A」の加速と新たなシナジー創出
国内市場の縮小や事業環境の急激な変化に対応するため、全く異なる業種の企業が、新たな成長の種を求めて中小企業を買収するケースが確実に増えています。
例えば、私が最近関わった案件では、食品スーパーを運営する会社が、顧客の健康志向に応えるため、小規模な有機野菜の生産法人を買収しました。
これは、単なる事業の足し算ではありません。
スーパーの持つ販売網と、生産法人の持つ栽培ノウハウが掛け合わさり、新たなブランド野菜を開発するという化学反応〈シナジー〉が生まれたのです。
M&Aは、創業者が大切に育ててきた事業というバトンを、次の走者に渡す駅伝のタスキリレーに似ています。
5億円規模の企業が持つ独自の技術やニッチな市場での高いシェアは、異業種という意外な走者(買い手)の手に渡ることで、想像もつかないようなスピードで成長を加速させることがあるのです。
2026年は、こうした「異業種間のタスキリレー」がさらに加速する年になるでしょう。
【売り手経営者向け】2026年、M&Aを成功させるための3つの準備
では、こうした市場環境の中で、売り手経営者の皆様は何を準備すべきでしょうか?
変化の波を乗りこなすために不可欠な「3つの準備」について、具体的な行動計画としてお伝えします。
準備1:客観的な企業価値の把握と「磨き上げ」
M&Aの検討を始めたら、まず最初に行うべきは「自社の客観的な価値を知ること」です。
これは、会社の健康診断を受けるようなものです。
多くの場合、経営者ご自身が感じている価値と、M&A市場での評価額にはギャップがあります。
決算書の数字だけでなく、長年培ってきた技術力、従業員のスキル、強固な顧客基盤といった「見えない価値(無形資産)」を専門家の協力のもとで可視化することが重要です。
健康診断で課題が見つかれば、次に筋力トレーニング、つまり「磨き上げ」を行います。
例えば、社長個人に依存している業務をマニュアル化して誰でもできるようにする〈業務プロセスの標準化〉、特許や商標を整理して法的に保護する〈知的財産の整理〉といった地道な取り組みが、最終的な売却価格を大きく左右します。
準備2:変化に対応する柔軟な売却スキームの検討
M&Aというと、会社の株式を100%売却することだけをイメージしがちですが、選択肢はそれだけではありません。
- 一部株式の売却: 会社の経営権は維持しつつ、買い手企業と資本業務提携を結び、事業成長を加速させる。
- 二段階イグジット: まずPEファンドに株式の一部を売却して共同で経営を行い、数年後に残りの株式を売却して完全に引退する。
- 事業譲渡: 会社全体ではなく、特定の事業部門だけを切り出して売却する。
【用語解説】
- スキーム: M&Aを実行するための具体的な手法や枠組みのこと。
- イグジット: 創業者や投資家が、保有する株式を売却して投資資金を回収すること。
どのスキームが最適かは、経営者の皆様の「M&Aを通じて何を実現したいか」によって全く異なります。
「すぐにでも引退して悠々自適の生活を送りたい」のか、「あと数年は経営に関わり、従業員の雇用を確実に見届けたい」のか。
ご自身の想いを整理し、それを実現できる柔軟な選択肢を検討することが、納得感のあるM&Aに繋がります。
準備3:中立的な専門家の見極めとセカンドオピニオンの活用
M&Aアドバイザー資格制度が導入されても、最終的に誰をパートナーに選ぶかが成否を分けるという事実に変わりはありません。
M&Aの専門家には、主に売り手と買い手の間に入って交渉をまとめる「仲介会社」と、売り手か買い手どちらか一方の専属代理人となる「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」がいます。
それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが優れているというものではありません。
私が独立系コンサルタントとして最も重要だと考えているのは、特定の立場に偏らないセカンドオピニオンの活用です。
重い病気の診断を受けた時、別の医師の意見も聞くのと同じです。
ある専門家から「あなたの会社の価値は3億円です」と言われても、別の専門家が見れば「この技術には将来性があるから5億円の価値がある」と評価するかもしれません。
私の強みは、特定の仲介会社やFAに属さない完全な中立性です。
だからこそ、それぞれの専門家の特徴を公平に比較し、経営者の皆様にとって最善の選択肢は何かを客観的にアドバイスできます。
一つの意見を鵜呑みにせず、必ず複数の専門家から話を聞き、比較検討することを強くお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q: 2026年の金利上昇で、M&Aの売却価格は下がってしまうのでしょうか?
A: 必ずしも下がるとは限りません。
確かに企業価値評価(バリュエーション)の理論上はマイナスの影響がありますが、買い手とのシナジー効果や貴社の独自性が高く評価されれば、好条件での売却は十分可能です。
重要なのは、金利動向に一喜一憂せず、自社の価値を客観的に把握し、磨き上げることです。
【高橋の視点】
金融機関は金利だけでなく、事業の将来性、特にキャッシュフローの安定性をより厳しく見ます。金利上昇下では、盤石な財務基盤と安定した収益力こそが、何よりの交渉材料になります。
Q: 後継者不在ですが、急いで売却すべきでしょうか?
A: 焦りは禁物です。
事業承継ニーズは2026年以降も継続するため、売り手市場の傾向は当面続くと考えられます。
しかし、準備不足のまま交渉のテーブルにつくと、買い手から足元を見られ、不利な条件を提示される可能性があります。
まずは信頼できる専門家に相談し、自社の現状分析と企業価値向上のための準備から始めることをお勧めします。
【高橋の視点】
M&Aは価格だけが全てではありません。経営者の皆様がこれまで築き上げてきた会社への「想い」を整理し、従業員の雇用、取引先との関係など、何を実現したいM&Aなのかを明確にすることが、後悔のないM&Aの第一歩です。
Q: 5億円規模の会社でも、PEファンドは買ってくれるのでしょうか?
A: はい、可能性は十分にあります。
近年は中小企業を対象とするPEファンドも増えており、特に独自の強みを持つ企業や、経営改善による成長が見込める企業は魅力的な投資対象と映ります。
事業会社とは異なる視点で企業価値を評価してくれる可能性があるため、有力な選択肢の一つです。
【高橋の視点】
ファンドは経営のプロ集団です。彼らと対等に交渉を進めるためには、こちらも相応の準備と戦略が必要です。数字の裏付けはもちろん、事業の成長ストーリーを論理的に語れるかどうかが鍵となります。そのためにも、中立的なアドバイザーのサポートが不可欠です。
Q: M&Aの相談は、まずどこにすれば良いですか?
A: 最初の相談窓口として、公的機関である「事業承継・引継ぎ支援センター」や、日頃から付き合いのある取引金融機関に声をかけるのが一般的です。
その上で、本格的に検討する段階になったら、必ず複数のM&A専門会社(仲介会社やFA)から話を聞き、提案内容や担当者の質を比較検討することが極めて重要です。
【高橋の視点】
各専門家には、その立場による特徴や得意・不得意があります。例えば、金融機関は融資とセットで提案してくるかもしれませんし、仲介会社は成約を急ぐ傾向があるかもしれません。一つの意見を鵜呑みにせず、必ずセカンドオピニオンを求めることを強く推奨します。
Q: 特例事業承継税制の期限(2026年3月末)が迫っていますが、影響はありますか?
A: 親族内承継も視野に入れている場合は、非常に重要なポイントです。
贈与税・相続税の納税が猶予される特例事業承継税制の適用に必要な「特例承継計画」の提出期限は、2026年3月31日です。
ただし、令和8年度(2026年度)税制改正大綱では、この計画提出期限をさらに延長する方針が示されました。
とはいえ、制度の詳細が変更される可能性もあるため、最新の動向を注視する必要があります。M&Aだけでなく親族への承継も選択肢として残している場合は、税理士などの専門家と連携し、早めに情報収集と対策を行うことが肝要です。
まとめ
2026年のM&A市場は、事業承継ニーズという力強い追い風を底流としながらも、金利上昇や制度改革といった変化の波が訪れる、まさに「航海図が書き換わる年」となるでしょう。
特に5億円規模のM&Aを目指す経営者の皆様にとっては、マクロな動向を冷静に理解しつつ、自社の状況に合わせたミクロな戦略を立てることが不可欠です。
最も重要なのは、外部環境の変化に一喜一憂するのではなく、ご自身の会社の価値を客観的に見つめ、適切な準備を着実に進めることです。
そして、その長い航海のプロセスにおいて、特定の港(特定の利害関係者)に偏らない、信頼できる航海士、すなわち中立的な専門家をパートナーに選ぶことです。
本記事が、皆様が納得のいくM&Aを実現するための、確かな羅針盤となれば幸いです。


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